ミネラル分を豊富に含む天然塩。
日本の家庭で広く普及しているのは精製塩ですが、塩には自然塩、天然塩とも呼ばれる種類の塩もあります。
比較的馴染みのある岩塩も天然塩に含まれます。
今回は「そもそも天然塩とは何か」、「天然塩と精製塩の違い、見分け方は」、「天然塩と精製塩のどちらを使えば良いのか?」などを解説していきます。
天然塩とは
天然塩とは化学的に精製されていない、ミネラル分を含んだ塩のことを指します。
天然塩は自然塩とも呼ばれることもありますが、塩辛さがまろやかで甘味や旨みのある味わいが特徴です。
これはカルシウムやマグネシウムといったミネラル分が多く含まれていることが要因です。
また、人の体に必須のミネラルを摂取することもできるため、健康面でも優れています。
天然塩は海水を天日させ蒸発させたり、煮詰めて濃縮し結晶化させるなど様々な製法で作られますが、実は天然塩に明確な定義はありません。
岩塩や海塩、ウユニ塩湖や死海で有名な塩湖から作られた湖塩など天然塩の中にも種類が豊富にあります。
天然や自然という言葉を使って販売することが禁止されているため、スーパーなどで「天然塩」「自然塩」を見ることが少ないですが種類は実はとても豊富です。
塩の種類は大別すると3種類
そもそも塩自体は、その作られ方によって「天然塩」、「精製塩」、「再生加工塩」の3種類に大別されます。
塩の種類 | 特徴 | 製法 | 原材料 | 主な原産国 |
---|---|---|---|---|
天然塩 | やや高価だが、ミネラルが含まれるため味に奥行きがありやや甘みも。 | ・海水を天日干し ・平釜で煮詰める ・岩塩を採掘 etc. | ・岩塩 ・海水 ・海塩 ・天日塩 ・湖塩 ・温泉水 | オーストラリアやメキシコ |
精製塩 | 大量生産に向いているので価格はリーズナブルだが、ミネラルが無いためただしょっぱい。 | 海水を電気分解し、化学的に塩分を抽出 | 海塩 | 日本 |
再生加工塩 | 精製塩や輸入した塩ににがりや海水を添加しており、多少のミネラル分を含む。 | 精製塩や海外から輸入した天然塩に、にがりや海水を添加 | 海塩 | オーストラリアやメキシコ |
塩は基本的に全て海水が元となりますが、塩にするための過程で種類が分かれてきます。
天然塩と精製塩の違い
天然塩と精製塩の大きな違いは作り方の違いです。
天然塩が天日干しや煮詰めるなどの方法で作られるのに対し、精製塩は化学的に海水を電気分解し、塩化ナトリウム(Nacl)のみを抽出して作られます。
精製塩は、塩化ナトリウムが99.5%以上の高純度のもの、海水からイオン交換膜透析法と呼ばれる方法で塩の成分を濃縮した塩化ナトリウム99%以上のものがあります。
この違いにより成分と味の違いの2つの違いが生まれれます。
天然塩と精製塩の成分の違い
精製塩は、精製する過程で海水に含まれるミネラル分が取り除かれてしまいます。
一方天然塩はミネラル分そのままに作られるためミネラル分を多く含みます。
ミネラル分とは一言で言うと体の調整役です。人間の臓器や細胞の活動のサポート、歯や骨のもとになったりと生きていく上では欠かせない成分です。
作り方によってミネラル分を含むか含まないかという違いが生まれます。
天然塩と精製塩の味の違い
ミネラル分が含まれるかどうかによって、味にも違いが出てきます。
精製塩は塩分である塩化ナトリウムがほとんどですので、塩辛い味が特徴。
天然塩は含まれるミネラル分が甘味や旨味の成分なので、塩分の比率が少なくなるため基本的にはまろやかな塩味と甘味や旨味を感じる味になります。
塩が体に悪いイメージがあるのは、精製塩が一般家庭に普及しているから
塩=健康に悪いもの、摂り過ぎてはいけないものと思われている方も多かと思います。
しかし塩とそれに含まれるミネラル分は体に必須の成分であり、塩自体は本来体に良いものなのです。
スーパーなどにて市販で販売されている食卓塩の多くは精製塩で、塩分のみを摂るために大量生産されているためミネラルバランスが崩れ高血圧などを招きやすくなってしまっています。
もちろん精製塩にもメリットはあるので、塩の種類ごとの特徴を理解し、しっかりと使い分けることで無理に塩分を抑える必要は無いのです。
味や健康面では天然塩を選ぼう
これまで説明してきた通り、基本的には天然塩はミネラルを多く含み健康にも良いですし、塩辛さもまろやかで旨味なども含まれていて味も美味しいです。
そのため特別なこだわりが無ければ塩は本来天然塩を選ぶべきであると考えています。
精製塩が適している場合も
天然塩がおすすめではありますが、だからと言って精製塩が悪というわけではありません。
塩分が健康に悪いというのは摂り過ぎは良くないのであって、適量であれば精製塩でも全く問題はありません。
精製塩は大量生産するために作られているため、天然塩に比べて安価です。また、サラサラで溶けやすく調理時には使いやすいといった特徴もあります。
ミネラル分が入っていないということは雑味が少ないということでもありますので、塩味のみを付けたい場合などには精製塩を適量使う方が適している場合もあるのです。
天然塩の種類
天然塩の原料は海水ですが、種類は大きく分けると「岩塩」「海塩」「湖塩」の3種類に大別されます。
海水を天日干ししたり、平釜で煮詰めたもの、岩塩を採掘したものなど様々です。
塩気がしっかりしている岩塩
岩塩は、数億年前の海水が地殻変動で陸地に閉じ込められた海水が結晶化したもので、その上に土砂が堆積して地層化しています。
ピンクなどの色が付いているのは、鉄分などの他の成分が入っていることが要因です。
海水が原料ではありますが、天然塩の中ではミネラル分が少なく、塩分濃度が高めです。
そのため塩味が強めで、パンチのある味わいとなるのが特徴です。
ちなみに日本には岩塩が存在しないため、売られている岩塩は全て輸入品になります。
ミネラル豊富でまろやかな海塩
海水塩(海塩)は、
- 海水を煮詰めて作る方法
- 海水を汲み上げて天日干しする方法(天日塩)
などの製法で作られます。
ミネラル分が多いため、甘みがありまろやかな味わいな塩が多いです。
バランスの取れた湖塩
湖塩は、塩湖と呼ばれる塩分濃度5%以上の塩水の湖の水を蒸発させ結晶化させた塩です。
ウユニ塩湖や、死海などが有名ですね。
湖とありますが、かつて海だった場所の水が蒸発しているだけなので他の天然塩と同じく海水が原料になります。
生産量が少なく希少性が高いことが特徴で、ミネラル分が適度でやわらかな苦みと甘みがあり、色々な料理に合わせやすいです。
岩塩同様、日本には塩湖が無い為、売られている湖塩は全て輸入された塩になります。
天然塩の選び方
天然塩の中にも種類がたくさんあることをお伝えしましたが、では実際に天然塩はどのように選んだら良いのでしょうか?
目的や用途、味の好みによって選ぶべき天然塩が変わってきます。
食材や調理方法に合わせた種類
天然塩は調理する食材に合わせて使い分けることがおすすめ。
食材 | 合う天然塩 |
---|---|
刺身やおにぎりなどの和食 白身魚や野菜などの繊細な味の食材 | 海塩(ミネラル分を多く含み旨みを引き出すため) |
肉や魚料理 | 岩塩(溶けにくく塩気が強いため) |
スープや煮込み料理 | 湖塩(ほのかな甘みとミネラルバランス) |
例えば和食や、白身魚などの繊細な食材にはミネラル分を多く含み、素材の味を引き出す海塩。
味の濃い赤身肉には溶けにくく、塩味が負けない岩塩。
煮込み料理などにはバランスよくミネラル分があり、ほのかに甘みを感じる湖塩が合うなど、食材の特徴や調理によって選ぶのが良いでしょう。
粒の大きさ
塩は粒の大きさも様々です。
粒が粗く大きい方が溶けにくく塩辛さがまろやかで、塩そのものの味を楽しみたい時に向いています。例えば岩塩などは基本的に粗いですが、ステーキにそのまま掛けるなどがおすすめ。
粒が小さい方がすぐに溶けるため塩辛さをダイレクトに感じることができます。料理に均一に混ぜ込みたい時にはこちらが向いています。
幅広く使いたい場合には中程度の粒の粗さが良いです!
粒の大きさごとの合う食材や、使い方は以下の通りです。
塩の粒の大きさ | 合う食材や使い方 |
---|---|
かなり大きめ | ・ゆっくり溶けるためつけ置きの料理に ・パスタが柔らかくなるのと同じペースで溶けるため ・茹でる際に使うとまろやかな味に |
大きめ | ・口の中で塩辛さが長く残るので赤身肉や魚に合う |
小さめ | ・溶けやすいため天ぷらや白身魚、野菜とも相性が良い |
ミネラル分のバランスによる味の違い
天然塩に含まれるミネラル分によって塩の味が変わってきます。
ミネラル分のみが味を決めているわけではないですが、それぞれのミネラル成分ごとに味の特徴を持っているため、その含有バランスで味が変わってきます。
塩に多く含まれるミネラル分はナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムで、それぞれの味は以下の通りです。
この4種類の含有量は基本的にラベルの裏面に記載があります!
ミネラル分 | 味の特徴 |
---|---|
カリウム | キレのある酸味 |
カルシウム | 甘い無味 |
マグネシウム | 旨い苦味(塩化マグネシウム) コクのある苦味(硫酸マグネシウム) |
ナトリウム | 塩辛味 |
複数個持つのもおすすめ
そもそもではありますが、塩自体は1つしか使ってはいけないなどということはありません!
また、ここまで解説してきた通りでどんな食材や用途にも合う完璧な塩!というのはありません。
そのためよく使う食材や用途、好みに合わせた何種類かの塩を持つこともおすすめです。
天然塩と精製塩の見分け方
天然塩と精製塩の見分け方は、塩は原材料名と工程の記載が義務付けられているため、この2つを見ることで塩の種類を見分けることが可能です!
天然や自然の表記は禁止されているため、商品名だけでは天然塩かどうかの区別が難しいです。
塩の種類 | 原材料 | 工程 |
---|---|---|
天然塩 | 天日塩、海水、岩塩、湖塩 | 天日、平釜 |
精製塩 | 海水 | イオン膜、立釜、乾燥 |
ぜひ上記を参考に、天然塩を選んでみてください!
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